須藤元気の書道の軌跡


須藤元気の書道の歩み

僕が書道を始めるきっかけは、司馬遼太郎の小説『空海の風景』を読んだことでした。この中で、空海が書道の達人であったことを知り、その深い技術と才能に興味を持ちました。しかし、もっと直接的な動機となったのは、格闘家として知名度が上がり、サインを求められる機会が増えた際、自分の字のあまりの汚さに衝撃を受け、「このままではいけない」と強く思ったことでした。

その後、高校時代の恩師のご縁で、柳田家四代目の柳田泰山先生と出会いました。柳田家は江戸時代に初代柳田正齋から始まり、二代目泰麓、三代目泰雲と続く、楷書の名門中の名門です。泰書會を見学した際、泰山先生が書く姿とその文字の美しさに感動し、その場で入会を決意しました。

書道を始めた当初は、「字が上手くなるだろう」と期待していましたが、泰山先生から「書道をやっても字が上手くなるわけではない」と告げられました。当時はその言葉の意味が理解できませんでしたが、今では深く納得しています。書道は単なる「字を書く技術」ではなく、その奥にある精神性や美意識に魅了され、すっかりのめり込むようになりました。

現代はデジタル化が進み、文字を書く機会が減少しています。しかし、だからこそアナログで「揺らぎ」を持つ書道の価値がより際立つと感じています。書道には、人間らしさや個性を表現する力があり、その魅力をこれからも大切にして表現していきたいと思います。

経歴

2003年 泰書會入門

2006年第58回 毎日書道展 入選

2008年第60回 毎日書道展 入選

同年 第15回 泰書展 新人奨励賞 受賞

2009年第26回 産経国際書展 入選

2015年柳田泰山先生より雅号「泰玄」を授かる

2016年東京書作展 奨励賞 受賞

2021年東京書作展 優秀賞 受賞

2023年東京書作展 奨励賞 受賞